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『研修開発入門』

『研修開発入門』

『研修開発入門』の構成

  • はじめに
  • 第1章 研修開発とはなにか
  • 第2章 研修企画:ニーズを知る、学習者を分析する、同じ船に乗ってもらう
  • 第3章 研修のデザイン①:課題を分析し行動目標を立て、評価手法を考える
  • 第4章 研修のデザイン②:1日を組み立てる
  • 第5章 研修講師選定
  • 第6章 研修のPRと事前コミュニケーション戦略
  • 第7章 研修準備:研修直前のデザイン
  • 第8章 研修実施:「教えること」の技法① オープニング編

※分量を超えたようなので、以下は、別のキーワードページにまとめる。

  • 第9章 研修実施:「教えること」の技法② メインアクティビティ編
  • 第10章 研修実施:「教えること」の技法③ クロージング編
  • 第11章 研修フォローとレポーティング
  • 第12章 人材育成のプロとして、いかに学ぶか
  • おわりに
  • 索引

こつこつ、1章ずつをめやすにまとめを記載。

まとめ+主観的感想+疑問、批判は、このキーワードページをもとに

別途MLで展開した。

はじめに

  • 『研修開発入門』は、2006年の『企業内人材育成入門』の実践編として、これから初めて研修開発をする人がターゲット。
企業内人材育成入門

企業内人材育成入門

  • 2008年のリーマンショック以降、「研修の内製化(自社開発)」が人材育成のトレンドとなってきている。しかし、これまで研修開発のノウハウは属人的に保持されていて、組織的な形式知になっていない。それに対応した入門書として執筆した。
  • これまで出版されてきた研修開発に関する本では①教授設計理論(ID)か②研修講師が自分のノウハウで書いた実務書であった。この本では、不足があった経営的、組織的視点を盛り込んだ。さらには、社内の力学に踏み込んだ「政治」的側面にも目配りして執筆した。
  • また、①筆者の研究知(縦糸)とともに②企業教育関係者の実践知(横糸)の融合を試みた。相互補完により、真に役立つ本を目指して書かれた。
  • 執筆スタイルとしては、①平易な記述②メタファやイラストの多用③ポイントを絞り、(思い切って)要約している。

第1章 研修開発とはなにか

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第1章のまとめページはこちら。みる時は「なぞなぞ」の回答を入れてください。

ねらい

「人材育成の目的」と「人材育成の歴史」を理解する

キーワード

手術と漢方、研修かOJTか、揺れる振り子、研修の内製化

1.はじめに

  • 人材育成とは、「組織が戦略を達成するためのものであり、そのための学習を促進すること」(fombrun et al., 1984)
    • 学習を促進することはあくまで「手段」であって、目的ではない。
    • 目的は、「組織の戦略達成」「組織・事業の存続」にある。つまり企業の経営活動に資すること(Ulrich,D. 1997)

2.人材育成とは何か

  • 「手術」と「漢方」のメタファから
    • 手術…短期的かつ緊急的に行わなければならない人材育成。新興マーケットへの適応など、ただちに行われるべきもの。
    • 漢方…組織の中核能力や、優秀な人材を組織内に維持しておくために必要な人材育成。技術力が差別化能力の企業としたら、技術伝承がなされ、中長期的に競争優位を保つことが出来るようにしていく取り組みのこと。=組織の健全性の維持
      • 優秀な人材を組織内に維持していくことでもあり、社員のエンプロイアビリティを高めるための能力開発、キャリア開発の機会提供もそう見なせる。
  • 実務担当者からミドルマネジャーへの移行(トランジション)を円滑に進めることも、人材育成機能のひとつである

3.人材育成・小史をたどる

  • 人材育成の過去の歴史を把握しておくことは大事。過去の「あやまち」を知っておこう
  • 日本における人材育成のトレンド(言説空間)においては、「教室における学習(研修)」か「現場での経験(OJT)」かという2つの極にふれてきた歴史がある。
    • 1940年代、敗戦前後について。元来、新人の見習いから先輩、親方と共に生活しながら仕事を覚えていく「伝統的徒弟制」によって育成が行われていた。→1945敗戦後、管理監督者訓練が米国によってもたらされた。「研修・教室・知識」重視の時期に。
      • MTP:中下級管理者層向け研修
      • TWI:管理者層向け研修
      • JST:人事院監督者訓練プログラム
    • 1950年代、朝鮮戦争特需。国家一丸となって、生産力を高める。1958年職業訓練法の制定。「研修・教室・知識」がさらに強まる。
    • 1950~60年代、急激に日本が工業化を果たす。高度経済成長期に。この時期にOJTが本格的に発展。大量採用、長期雇用を背景にして、先達の技術を後輩が仕事経験を踏みながら覚えていく「OJT」が確立されていった。(小池,1991、1997)
    • 1960~70年代、次第に安定成長へ。OJTから研修へと揺り戻し。米国での心理学研究などを発祥とする感受性訓練(ST)などが、「組織開発」のラベルのもとに普及していった。また、創造性開発の手法であるKJ法(川喜田二郎)もこの時期に起こった。
    • 1973年オイルショック、社会不安を背景に、管理職や予備軍による勉強会、異業種交流会が流行。
    • 1980年代、製造業の海外進出をもとに、「国際人」「国際化」の時代に。「研修・教室・知識」の側にあり、「異文化適応プログラム」や「言語学習」などがブームに。第1次グローバル人材育成ブームとも見なせる。
      • MBAが注目され始め、大手企業からは海外派遣留学もさかんになる。
      • 海外進出を果たした製造業は、現地の工場で現地採用者をOJTで育て始める。工場とともに、人材育成のOJTも海外輸出された。
    • 1990年代、冬の時代の始まり。バブル崩壊、「終身雇用」「年功序列」など、日本型の雇用施策の行き詰まり。人材育成機能は弱体化していき、コストカットのもと、「職場、現場、経験」重視になっていく。
    • 1990年代後半~2000年代中盤にかけて、「コーチング」が管理者研修に。目標の提示と支援を主眼においたもので、部下とのかかわりになやむ管理層に受け入れられた。
    • 2000年代、企業の経営課題に「人材育成」が浮かんでくる。1990年代に減退した職場の人材育成機能を立て直そうとする動き。日本型雇用が崩れゆく中で個人の自律的なキャリア開発に対する意識が高まる。(花田,2006)
    • この時期は、従業員が現場の経験で学ぶという認識が広まり、「OJT」の再構築の動きが活発になる。(松尾,2006,2011)
    • 団塊世代の大量退職を前に、知識・技術の継承、若手育成が課題になり、選抜型でミドルを育成する「リーダーシップ開発」も活発に。
      • 1940年代とは異なり、選抜された社員向けにタフなプロジェクトや業務を割り当て、アクションを促しつつ、行為を内省させるスタイルに。アクションラーニング。
    • また、2000年代は、企業内研修の質的転換が起こり、階層型研修などの儀式的要素が高い研修が見直される、より実務に活かされる研修の在り方が模索されてきている。教授設計理論や学習科学の知見が本格的に流入した。(中原他,2006)
現在の4つの変化
  • 研修の内製化…製造業では当たり前だったが、それ以外の業種へも波及
  • 勉強会や交流会の隆盛…自らのキャリアを開発するという個の視点以外に、異業種コラボでイノベーションを有むという側面も
  • 研修開発のグローバル化…多国籍展開の企業では、現地と国内の研修を一律化し、ダイバーシティあふれる参加者によって研修が実施されてきている。1980年代とはまた違った状況に。
  • 組織開発の再注目…ダイバーシティあふれる職場、雇用関係を背景に、いかに組織としてまとめ、卓越した集団となっていくか、という社会的ニーズの高まり。

4.研修か?OJTか?

  • 現在は、OJTの重要性が再認識され、どちらかといえば経験重視(OJT)にウェイトが高い。しかし、OJTには以下のような課題もある
    • 学習効果、クオリティが現場マネジャーに依存する
    • マネジャーの能力範囲を超えて学べない
    • 学習が起こるタイミングが「偶然」に依存する
    • 学びが多いはずの仕事経験が「単なる労働」になるリスクがある

5.2000年代の研修開発-研修内製化

  • 現在は大きな潮流として「研修内製化」がある。それが本書の執筆の前景をなしている。いわゆるコスト削減、という点以外に以下の点が挙げられる。
    • 競争優位を生み出す意識の変化…パッケージ化された企業研修の購入でなく、差別化された教育内容として自社開発のニーズが高まる
    • 世代継承性とコアコンピタンスの維持…その企業が独自に持つ強み、コアコンピタンスは外部の講師には伝えられない
    • 人材育成に関する情報氾濫…メディア環境の変化により、情報が広まった。また、SNSなどによりネットワーキングも進んだ。

6.研修内製化の副次的効果

  • コスト削減以外にもさまざまな副次的効果が生み出されている
    • 教えることで成長する(自己能力の確認)…講師自身が自己能力を意識し、再確認出来る。意識が高まり成長につながる
    • 社内ネットワークの形成
    • 愛社精神の醸成、組織文化の再確認…自社独自の言い回し、共通言語などを介して、自社存在を意識するようになる
    • 組織学習=暗黙知の形式知化…属人化されていた知識が制度化、マニュアル化される。
    • 他部門への理解が深まる
    • 部下育成に熱心なマネジャーの育成・学ぶ風土の醸成

7.研修開発のプロセスとは何か?

  • 研修開発とは、「研修を考え、学習者に届け、効果を生み出すまでのプロセス」ととらえる
    • 研修企画→研修デザイン→研修講師選定→研修広報→研修準備→研修実施→研修フォローとレポーティングの7つのプロセス

第2章 研修企画:ニーズを知る、学習者を分析する、同じ船に乗ってもらう

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ねらい

研修ニーズを知り、学習者を設定して、研修の企画提案を行います

キーワード

戦略ニーズ、事業ニーズ、組織ニーズ、経営陣と現場トップのステークホルダー化

1.はじめに

  • 研修開発のプロセスの中でも、本章のテーマである「研修企画」は最も重要なプロセスのひとつ。
    • ある実務家は「8割の労力を研修企画にかけている」また別の人は「企画7割、運営3割」とも
  • 経営、現場のニーズに合致した「研修企画」を行うためには、4つのポイントが大切である
    • ニーズの探索…経営や現場とコミュニケーションしながら、戦略、現状を把握してニーズを探索する
    • 人材マネジメント施策の検討…研修で解決出来ること、研修以外ですべきことを見極める
    • 学習者の分析…学習者のリアリティについて知ること
    • 「経営陣」と「現場トップ」のステークホルダー化…研修の利害関係者に事前の情報提供、提案活動を行い、後で協力を得られるようにしておく

2.ニーズの探索

  • 3つのニーズを探索する「戦略ニーズ」「事業ニーズ」「組織ニーズ」
  • 研修開発の第一歩は、経営と現場とコミュニケーションしながら、研修開発担当者が「自ら」探索すること
    • 持ち込まれるニーズはさまざまあるが、一方的な持ち込みを受け入れるだけではいけない。真因は、担当者自らが足を運んでイニシアティブを持って、探すべきである。
    • また、研修のニーズは必ずしも経営陣や現場発のものだけではない。目の前の利益以外の観点で、中長期的に保持すべき能力の育成をするという視点も大切である。
    • そして、そういった立場にたてるのは、組織内においては、人事・人材育成担当者以外にはなかなか見当たらない
人材開発者が担当するべき3つのニーズ
  • 経営陣のニーズ=戦略ニーズ…生産拠点移動のための、グローバルに活躍出来る人材育成
  • 現場のニーズ=事業ニーズ…プレゼンテーションや論理的思考など、現場で必要なスキルを獲得する研修
  • 組織のニーズ…経営理念を理解させる、ワークライフバランスに関する研修、など
情報収集や仮説検証をする際の重要な3つのポイント
  • 「研修ニーズを解決するための手法」に過剰に思い入れない→問題設定と問題解決においては、「問題設定」のほうが重要である
  • 新しいもの、だけでなく、もうニーズが失われたものをやめること→ニーズと照らし合わせ、惰性で続きがちな研修を見直す
  • 社内の活動以外にも、研修開発会社や、他社の人材育成部門との情報交換や勉強会への出席を通じて、最新の情報をキャッチアップすること→他社の事例や動向を求められることがとても多い

3.人材マネジメント施策の検討

  • 抽出された問題を、採用、人材育成、配置、処遇など様々な人事マネジメント施策の、どの手段において解決するのが最適か、と考える。
  • 以下は、「職場のマネジャーが中途採用の社員をうまく扱えず、彼らが組織に定着していない」という課題解決について、考え方の一例。
    • 採用
      • 短期的:×大量の中途採用者が必要なため、これを減らすことは難しい
      • 中長期的:△中途採用者の洗髪基準を見直すことで対処出来るかも
    • 研修
      • 短期的:○チームビルディング研修や中途採用者向け研修が有効か?
      • 中長期的:(継続的な、中途採用者同士の悩みを対話する場をつくることもありか(←書籍には記載なし)
    • 配置
      • 短期的:×全部門で増員が必要なため、配置をいじるのは難しい
      • 中長期的:△中途採用者の配置先を、ベテランマネジャーなど考慮して配置する余地があるかも

4.学習者の分析

  • 研修開発担当者として、受講者=学習者を分析し、「介入対象者」を決め込む
  • 以下は、「職場が不活性化している」ことが問題になっている場合。誰を対象者にした研修が出来るか?5つの枠組みから分析をしてみる。
    • 対象者…具体的に考える。例えば×「中途社員」→○「入社3年以内の、海外勤務をしていないもの」など絞り込む
    • 参加単位と人数…個人参加か、2名1セット参加か?という単位と、総人数
    • 期間・場所・コスト…どの程度、時間拘束をするか、どこで研修を行うか、それによるコストはどれくらいかかるか
    • ソーシャルサポート…★隠れたポイント。研修の効果において、職場の果たす役割が大きいことが2000年代以降の研究知見である(Brinkerhoff 2008)、研修以外に、どの程度、職場を書き込むことが出来るか、職場メンバーの協力体制を取り付ける
    • 望まれる成果と予想される困難…上記4つを考えた後、考えてみる。
学習者のプロファイリング
  • 研修前に知れば知るほど良い。時間があれば、現場に赴いてインタビューが出来るとベター。
  • プロファイリングについては“5K”に着目する。5Kとは、「経験」、「知識」、「言葉」、「権限」、「肝」
    • 経験…研修参加者がどんな業務経験をもっているのか?
    • 知識…保有する知識やスキル、受講済みの研修履歴
    • 言葉…グループワーク、ディスカッションする際の言語能力。参加者の傾聴と自己開示に関わってくる能力
    • 権限…社内におけるフォーマルな立場、職位、およびインフォーマルな周りからのリスペクト
    • 肝…参加者が最も知りたいこと、主要な興味関心はなにか?成人学習者の特徴は、自分の業務に関連があったり、メリットがあることを優先して学ぶ傾向にある

5.経営陣と現場トップのステークホルダー化

  • 研修企画の実務とは異なる次元ながらに大切なことは、経営陣・利害関係者の「身内化=ステークホルダー化」である。
  • ロジックや客観的な指標を示しながら、丁寧に説明を尽くすことが大切。
  • 過去のデータ(数字、経験者コメント、口コミ、その時のアウトプット、ビジュアル的なもの)などを上手に活用したい。過去の研修のことを把握しておく必要がある
    • 数字…満足度、達成度など評価データをとっておく。自己評定以外に、上司の客観的評価もあるとなおよい
    • 経験談、口コミ…定性データも有効。完全な客観性を示すのは難しいので織り交ぜながら伝える。また、口コミにより、現場マネジャーの応援が得られれば、研修の実施にも追い風になる
    • アウトプット、ビジュアル…研修の動画、写真があると、具体性がなお強まる
  • 研修評価とは、研修そのものの持続可能性をめぐる政治交渉である!そのために、「身内化」を意識しよう。提案を「たたき台」として、一緒に経営者や利害関係者と創り上げて行ければ理想である。

第3章 研修のデザイン①:課題を分析し行動目標を立て、評価手法を考える

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ねらい

研修のゴールを設定し、評価方法を決定する

キーワード

行動目標、表目的、裏目的、研修評価

1.はじめに

  • 「研修を開発すること」とは、教材をデザインすること、ファシリテーションを行うことではない。それは、関係するステークホルダーのニーズを拾い、かつ「同じ船」に乗せていく「政治的交渉のプロセス」である。そこにはリーダーシップの発揮が求められる。

2.研修の目的を決める

  • 研修カリキュラムのデザインは「目的を設定する」ところから始まる。3つの観点から書くことが求められる
    • 1なぜ学ぶことが必要なのか(学ぶ理由)
    • 2どんなことを学んでもらい、変化してもらうのか(学習者の変化)
    • 3どのような変化を現場に導くのか(学びの適用・転移)
  • このうち、2が重要。学習者の変化の部分を、「教えること/教えた内容」としてとらえて記述してしまうことがあるがNG。教えることは手段であって目的ではない。
  • 学習者を主語として、学び手がいかに変化するか、という観点から書くことが求められる。
  • 実際の行動につながる「行動目標化」することが重要。それも3つの点で細分化して設定する
    • 1ナレッジ…行動目標を満たすために必要な知識→知る、理解するという観点でなく、●●出来ること、というかたちで記述する
    • 2プラクティス…行動目標を満たすための必要な身体技法の訓練→知っている知識を具体的に実践出来るかがポイント
    • 3バリュー…行動目標を満たすために持ってもらいたい価値観→葛藤状態をうまく入れて目標の記述を行うことで、判断に迷った時の意思決定のよすがになる
2-2表目的と裏目的
  • 表向きな達成目標以外に、考慮すべきは隠された「政治的な」目的を考慮する必要がある。カリキュラムやメンバー分けの工夫において見落としてはいけない点である。
    • 例えば、教育的な目的以外にも、組織内の関係性改善や結合を強化する目的が隠されていることがある

3.評価の手法を考える

  • 具体的な行動目標が定められたら、それは評価される必要がある。評価のあり方を考えておくことで、自分が立てた行動目標の妥当性もチェック出来る。そのため、「目標立て」と「評価手法の検討」はセットで考えることが良い
  • 評価については、すでに会社内で取得されている経営手法とリンクするように考えられると理想である
    • 例:営業で設定されているKPIを基準に考える、職場の事故率の変化をチェックする、MRのドクター接触頻度を指標にする、職場のES評価を用いる…などが書籍で紹介されている例
  • 既存の指標がなく、あらたに設定する場合には以下の点を考慮すること
    • When…いつデータを取得するか→研修前、研修中、研修後、どこでとるか
    • Who…誰からデータを取得するか→研修参加者か、職場の上司や先輩を対象にするか、特定の評価者を設けるか
    • What…どんなデータを取得するか→データの「質の観点」からは、定性的(自由記述)、定量的(アンケート数値)データとして取得出来る。データの「深さの観点」からは、古典的な4分類がある。(kirkaptrick 1959)
      • レベル1 反応(Reaction)満足度の測定
      • レベル2 学習(Learning)研修終了後に、どれだけ知識が蓄積出来たか、行動がどのように変わったか
      • レベル3 行動(Behavior)学習したことが、どれだけ職場での行動変化につながったか
      • レベル4 成果(Results)学習した内容がどれだけビジネスインパクトにつながったのか。直接的に生み出した利益など。
    • How feasible…どの程度実現可能か

※この章は、特にアンケートサンプルなど具体的な例示が多いため、気になった方は原典にて、確認することをお勧めする

第4章 研修のデザイン②:1日を組み立てる

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ねらい

学びの原理原則を理解し、研修内容を組み立てます

キーワード

学習者中心、らせん構造、知識と体験、学習者共同体、モデリング

1.はじめに

  • 研修の1日の流れをデザインしていくことは、「ブロックを組み立てる」ようなもの。「多様なカタチのブロック=多様な学習活動」を組み合わせて、1日のカリキュラム(学習体験)を創り上げていく。3つの観点から研修を具体的にデザインしていく。
    • 1.「学びの原理・原則」を心にとどめる(プリンシパル)
    • 2.学習活動ブロックを試行錯誤しながら組み立てる(モデリング)
    • 3.学習活動の流れを明示化する(タイムスケジューリング)

2.学びの原理・原則を知る(プリンシプル)

  • 学習研究、経営学習研究には、長井研究の蓄積があるので、ある程度一般性が示されている。(Ambrose et al., 2010)(Bransford et al., 2000)(Sawyer 2006)学びの原理を以下に記す
    • 1.目的の原理…成人の学習にとって何より大切なのは「なぜ学ぶか?」の目的への意識づけ
    • 2.学習者中心の原理…学習者の立場にたち、学習者の現在の状況に合った内容を選択すること
    • 3.多様性とらせんの原理…飽きやすい大人のために、多種多様な活動を組み合わせ、徐々にスモールステップでステップアップさせていく。
    • 4.知識と体験の原理…概念的な知識と体験や実習をバランス良く組み合わせる。たいていはどちらかの極にふれがちになるため。
    • 5.学習者共同体の原理…人は学ぶときに他者を必要とする。他者と共に学べる工夫をする。「基本的に、学習というのは他者のなかにある」というのが学習研究の知見である。
    • 6.フィードバックと内省の原理…学習された内容にたいする実践に、他者から評価(フィードバック)がなされ、内省(リフレクション)する機会がもたらされることが大切。
    • 7.エンパワーメントの原理…過去のやり方を否定し、新たなものを生み出すのは痛みを伴う。そのため、混乱や葛藤が起こることがあるが、そのネガティブな感情を研修講師は元気づけ、現場に帰すことが必要。

(※コラム:その他、生理的条件にも注意をしよう。午前午後の時間の目配り、食事後の活動、休憩の取り入れ方など)

3.学習活動を組み立てる(モデリング)

  • 成人の学習は、細かな単位の活動を組み合わせていく→モデリング
  • 15~20分単位にて時間単位を定め、20分×3活動=1時間のように組み立てていく
    • 成人の集中の限界は15~20分と見られているため
  • 具体的なモデリングは、「オープニング」「メインアクティビティ」「クロージング」の3つにわかれる
オープニング
  • 研修開発のもっとも大切なプロセス。8割はここで決まる、という実務家もいる
  • 教授者と学習者のあいだで、コントラクト(契約)を結ぶことが試みられる
    • 研修を意味づける…研修内容が学ぶに値するものであることを示す。個人・職場・組織レベルの観点で考える。20分程度は意味づけに時間をとることが望ましい。
      • 個人レベル…これまでの業務経験とどう結びつくのか
      • 職場レベル…職場単位の改善にどういう意味をもつか
      • 組織レベル…職場をこえて、全社単位ではどんな意味をもっているのか
    • 研修の全体像を提示する…どのようなスケジュールで、どんなことを学ぶか、全体像を示す。進捗を示すことで、安心して学習に臨むことが出来る
    • 研修のグラウンドルールを設定する…1.会場・時間に関するルール(トイレや食事)2.学習に関するルールを設ける(発表のルールなど。議論なのか、主観を尊重する対話なのか、など)
メインアクティビティ
  • 下記の内容に留意してデザインする。著書では、「マネジメントディスカバリー」の研修カリキュラム例をもとに解説(https://jpc-management.jp/md/:titie:bookmark
    • 1.多種多様な学習活動を組み立て、少しずつステップアップするようにカリキュラムを組み立てる
    • 2.知識と体験のバランスをとる
    • 3.学習者同士のインタラクション(コミュニケーション)を重視する
    • 4.学習した内容について、折に触れてフィードバックをかけて内省を深めることが大切
クロージング
  • 研修のクロージングは最も記憶に残りやすいパートと言われる。
  • 最も大切なことは、研修を終えた学習者に再び現場の第一線に出て、事業や仕事のやり方に変化をもたらしてもらえるよう、エンパワーメントして研修室から送り出すこと。
  • 一般的にクロージングでは下記のことを行うことが多い
    • 1.ラップアップ…学んだ内容を振り返り、定着させたい内容について再度、届ける
    • 2.リフレクションとアクションメイキング…クロージングでは、研修全体の内容を思い起こさせて「この研修で学んだこと、気づいたことはなんであったか」を学習者の言葉で表現してもらう。下記のプロセスで進めていく
      • 出来事の描写(どんなことがおこったか)→自己の認識(その時自分は何をしていたか)→分析(何がよくて何がわるかったか)→アクションメイキング(これからなにをしていくか)
    • 3.研修事後アンケート…程度にもよるが、5分~最大で15分くらいとれると理想。

4.学習内容の流れを明示化する

  • 今までつくりあげてきたカリキュラムは、実際に具体的なタイムスケジューリングされる必要がある
  • 講師、事務局とシェアされていると、指針になりとても助かる
    • 時間…開始~終了を記載
    • 学習活動の内容…どこでどのような内容、知識を学んでもらうか
    • 講師の問いかけ、動き…講師はどのようなインストラクションを行い、どう動くか
    • 予想される学習者の反応…学習者は、どのような反応(感情、行動、認知)を示すか
    • 事務局の動き…事務局スタッフはどう動くか?
    • 備考

※書籍P128、129の具体的タイムスケジューリングを参考のこと。

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第5章 研修講師選定 教える人をいかに確保するか?

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ねらい

社内から講師を探す、または社外の研修講師を選定します

キーワード

コンテントナレッジとペダゴジカルナレッジ、TTT

1.はじめに

  • この章で扱うのは、研修内容のデリバー(Deliver)の主体のこと。誰が教えるのか、ということ。

2.社内から講師を探す

  • 研修講師を探すときには、まずは社内にいるかどうかを探索する。なぜなら、自社に最もフィットしたコンテンツを生み出せるのは理論上は自社の社員であるはずだから。
  • 一般的に登壇講師としては下記に分類出来る。
    • 儀式的登壇…経営陣などが研修の冒頭に組織としての実施意味の説明や、意気込みを語る。介入が難しい傾向にある。
    • スポット登壇…非定期的に、自社社員が講師を担当。新人研修でマネジャーが話したり、代表社員が事業部の説明をしたりする。
    • カリキュラム登壇…自社内に社内講師育成、認定の制度をもち、定期的に自社社員を一定以上のカリキュラムを教える存在として位置づけている。
  • 日本企業では研修講師として特化して育てるということは、一企業においてはほとんどない。そのため、研修を行うという意味ではほぼ全員が素人であることを心得る。
  • 第1に大切なことは「誰を登壇させるのか」ということ。内部の講師は、研修参加者の多くが、講師の仕事の能力やキャリアを把握しているから。リスペクトされている人を選ぶ必要がある。
  • 第2には、研修講師は研修の質を高めるための教える技術について学ぶ必要がある。
    • コンテントナレッジ…内容知。業務など何を教えるかということ。
    • ペダゴジカルナレッジ…方法知。教える能力やファシリテーションなどどのように教えるのかということ。
  • このペダゴジカルナレッジを意識して習得してもらう必要がある。

3.社内講師育成の支援

  • 3つの留意点がある。
    • 1.研修講師の仕事を自社社員に丸投げしない→人事と現場のコラボレーションが大切。
    • 2.社内講師選定、登壇プロセス認定制度などの仕組み化が大切→人材開発部門がイニシアティブを持ってスカウトしていく
    • 3.研修デビューのための各種スキルを教え、登壇後もクオリティチェックをしていく
  • 研修会社のTTT(Training The Trainer)=研修講師育成プログラムを活用しても良いかも
  • 長期的視野では、教え合う-学び合う風土を組織内につくることが大切。人材開発部門は組織文化のガーディアンでもある。
  • ex.ソフトバンクモバイルの事例を記載

4.外部の研修講師に依頼する

  • 外部アウトソースをする場合について、以下のような理由から検討される。
    • 1資格を必要とするような専門的な内容の場合…メンタルヘルスや会計など高度な専門領域
    • 2最新・先端的な内容を扱っている場合…最先端のケースなど
    • 3社内の政治、組織事情から外部の介入が適当な場合…年長者向けや組織変革など
    • 4社内で開発するよりも安価な場合…教育内容が定型化されているコンテンツ。ロジカルシンキングやプレゼンなど。
    • 5専門の施設やツールなどを必要とする場合…製造業、IT、医療福祉などで専門のツールや施設がいる場合
    • 6将来的には自社でやりたいが、今はノウハウがない場合…グローバルな舞台を対象にして、英語で行う研修など
  • アウトソーシングのプロセスは以下のようになる。
    • 1アウトソーシング内容の決定…どの範囲をアウトソースするのか
    • 2プロポーザル(提案)の募集…第2~4章で検討してきた内容をしっかりとオリエン出来ることが大切
    • 3インタビュー…営業担当者、および講師との面談
    • 4品質テスト…その講師の公開講座や録画などを見る
    • 5実施
    • 6評価…定番の研修でも内容見直しをして、定期的に品質をチェックする
  • 研修会社選定のチェックポイントは以下(詳しくはP153の表を参照)
    • 組織要因(得意分野、過去の実績)
    • コンテンツ要因(研修コンテンツのマッチングやクオリティ)
    • コラボレーション要因(いかにコラボ、カスタマイズをしてくれるか)
    • PR要因(講師の授業を見られるか)
    • アフターフォロー要因(事後評価、レポーティングはどうか)
    • コスト要因(コスト的に妥当か)

第6章 研修のPRと事前コミュニケーション戦略

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ねらい

研修を効果的にPRし、研修効果を高めるための事前コミュニケーションを行う

キーワード

召集令状と招待状、学習レディネス、反転授業

1.はじめに

  • 前章までは、社内のニーズや研修企画など、研修デザインをとりまく会社環境を中心にみてきたが、学習者の視点を忘れてはいけない。
  • 研修内容を的確かつ魅力的に伝える「広報」という視点が必要になる。
  • 参加者を集めた後も、参加者との事前コミュニケーション戦略があることで、受講する目的意識ややる気が高まる。
  • 研修の成果は当日の内容だけではない!事前コミュニケーションがとても大事である。
  • たとえるなら、研修開発担当者の仕事は「ツアーコンダクター」である。

2.企画段階と実施段階をつなぐもの

  • この本の2~5章は企画、7~10章が実施の段階だが、それをつなぐのが知ってもらう、PR活動である。
  • 参加者がこなければ、いくらいい研修でも価値はない。
  • 研修の成果や学習の効果は、研修そのものだけでなく、その前後の活動がとても大切である(2012 中原)
  • 学習レディネス(準備状態)を高め、参加するメリットを伝え、モチベーションを高めるための広報が必要。

3.研修のPR

  • PRのためのメディアとして、さまざまある。以下は例。
    • パンフレット
    • メール
    • SNSやポータルなどWeb
    • マネジャーを介した周知
    • 社員ひとりひとりへの個別PR
  • 日時、場所、対象者、受講人数、講師、申し込み方法など基本的な研修概要を正確に記載する
  • 上記に加えて、「旅行パンフレット」のように、魅力的な点をアピールする。それには以下を意識する
    • キャッチーなタイトル(キャッチフレーズ)→対象者を意識して、刺さる言葉を用いる
    • 組織的な位置づけ、意味づけ→おもしろそうな点に加えて、組織としての研修に対する思いや考えを示す
    • ビジュアル→概要だけではまるで召集令状。そうでなく「招待状」と意識して作成する

4.受講者との事前コミュニケーション

  • 受講者が決まって、初回セッションにくるまでに事前コミュニケーションをとることが必要
    • 事前連絡のメール→連絡事項+目的や意味、心構えなどを含めて伝える。「招待状」であることを意識する。一斉でなく個別メールであることも有効
    • 事前課題とアンケート→受講者について多くのことを知ることができる。加えて、研修準備の意識づけともなる。

第7章 研修準備:研修直前のデザイン

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ねらい

受付、学習空間、研修ツールの準備をする

キーワード

学習空間デザイン、支援する事務局、ディレンマ・マネージング、ドキュメンテーション

1.はじめに

  • 研修直前に、学習者が快適かつ効率的に学ぶための環境をつくりあげることが大事

2.受付のロジスティクス

  • 研修は、学習者が受付に来るところから始まる。この瞬間から勝負は始まっている
  • 動線を確認しておいたり、ラインが混み合いすぎないように人員を調整したりする
    • 特に開始5分前は受付が集中するので臨機応変に対処しよう
名簿づくり
  • 3種類の用意が望ましい
    • 受付用…読み仮名を振ってもらうことがポイント
    • 講師用…講師向けに、名前以外のわかっている情報、所属や年齢や役職などを記載しておく
    • 参加者向け…個人情報はあまり出さず、研修内で自己紹介をしあってもらうのが良い
名札づくり
  • ○参加者分を事前に用意しておく場合が一般的だが、○呼ばれたい名前を参加者が自ら書く場合がある
  • あらかじめ、太いマジックペンを用意することで視認性が高まる
  • 名札は○タックシールで直接貼り付ける方法と○名札ホルダーに入れる場合などがある
    • 服に針を刺すものは、女性に忌避されることもあるので注意
    • 名札はなくすことがあるので予備を用意しておくと良い
教材・資料の手渡し
  • 配布教材や資料は、可能であればナンバリングしておく
    • ナンバリングしておくと、講師、事務局が受付名簿を見て人数を数えなくても人数を把握しやすい
  • 配付資料が多い場合は、研修開始時に、配布した点数を確認するとスムーズに研修を始めることが出来る
座席の案内
  • 座席が決まっている場合は、わかりやすくインストラクションをする
    • 例えば、席ごとに番号や記号をふる、座席表を配るなど
  • 冬場のコートは、クロークや、教室にハンガーを設けておくよい
  • また、床にかばんを置くことをためらう女性もいるので、鞄をかけるフックなども重宝する
連絡事項の紙
  • 会場の案内、タイムテーブル、研修の進め方の案内などは、A4用紙1枚にまとめて受付で渡せると良い
  • 記載事項としては、温度調整、パソコン、携帯電話、録音・録画、貴重品、講師への質問、留意事項、インフルエンザ対応、会場マップなどが挙げられる
お金の徴収
  • 研修費用そのものは発生しないことが多いが、懇親会費用など別途徴収する場合は、受付などで集金
    • 人数分のおつりと領収証を用意しておくと良い
    • 特におつりは余分に準備しておかないと受付が滞る
    • 領収証は事前に書き込んでおき、その場で宛先を書くだけですむようにしておくとスムーズ

3.学習環境のデザイン

  • 学習者が快適に学べる環境、かつ、外部環境を整えることで、ゆるやかに活動をコントロールする
  • 使いやすい空間は、3:4程度の縦長長方形の部屋といわれる。横に長い部屋は声が届きにくくなり、あまりむかない。
机と椅子の配置
  • 一番大きな要素を閉めている。目的にあわせて空間に変化をつけていく
  • どの形式でもセットをし終わったら、動くことが出来るかという動線を確認しよう
    • スクール形式…講義形式に向いている。近くの人と話し合う対話には向いていない
    • 島形式…作業を行うワークショップやグループ討議に向いている
      • 6人であると、2、3、6人と人数わけした対話も可能で、実務家には好まれている
    • 円陣形式…部屋の中央に向けてイスを輪のように並べる形式。30~40人程度まで可能。一体感が得られる
    • シアター形式…エモーションに訴えるようなコンテンツデリバリーを行う際に効果的。
着席とインタラクション
  • 誰をどこに座らせ、誰と誰を組み合わせるかを配置することは、コミュニケーションデザインということである
  • 例えば、部署を越えた話し合いであれば、多様な部署のグループにわけるなど工夫が必要である
    • ランダムアプローチ…あえて参加者に自由に席を選択してもらう。時間がかからず比較的気楽に参加出来る。メンバーが偏りがち
    • 固定型アプローチ…あらかじめ席を決めておく。比較的長時間活動に取り組む場合に効果的。出来るだけ多様なメンバー構成を意識する
    • 変動型アプローチ…途中で1~数回席替えを行う。途中でシャッフルすることで多様なメンバーと対話が出来て成人には好まれる。
照明のコントロール
  • 照明を落とすとじっくり語り合う雰囲気になる
  • 講演者へのスポットライトはリーダー的な演出ともなる
    • ジョブスのプレゼンを見ると照明と立ち位置について、ひとつの参考になる
食べ物と飲み物の準備
  • 研修冒頭のサプライズに、食べ物や飲み物も活用出来る。
  • 学びの空間においては、あらゆるものが学習を促進する「メディア」となる
  • アイスブレイクの活動に変えて、お菓子を振る舞うことで打ち解けやすくなる効果もある
  • どちらかといえば、飲食や楽しむことがタブー視されがちなため、あえて行うことで良い演出になることもある
    • キャンディ、チョコレート、フィンガーフード…手が汚れない、ゴミがすくないものが良い。カットするものは大変
    • コンセプチュアルフード…フードスタイリストにお願いするのも良い。コンセプトをあててもらうようにクイズのようにすることもある
    • コーヒーブレイク…コーヒーを用意するのであれば、同じグループの人と飲むことが出来るように活動をデザインするのも良い。
AV機器の設置
  • 研修室内のAV機器の環境によって、研修デザインは大きく変わる。プロジェクターのサイズや音声などチェックしよう。
    • 音声…講師が使うマイクはプレゼンスタイルによって変わる。有線、ワイヤレス、手持ち、ピンマイクなど、マイクによって講師の可動域はかわる。
    • 提示装置…プロジェクタとPCの接続は必ずやろう。他のPCを使うことも想定してUSBメモリーでのバックアップがしてあるとなお良い。
      • 自分の影がスクリーンにうつらないように注意
    • 映像…映像を利用する場合は、DVDから出力する場合と、PCから出力する場合とあるが、PCからの再生はトラブルになりやすいため事前チェックを。
    • ワイヤレスポインター…プレゼンを前後におくる機能、レーザーポインター機能、暗転、白転する機能など、講師のプレゼンを演出するのに必要
    • スピーカー…会場のAV機器から出ない場合は、持ち込むことも考慮。小型でも良いものも発売されている
    • ネットへの接続…無線が活用出来ない場合は有線の活用も検討。外部からの訪問者がつなげないことが多いので、使用する場合は会場に入る前に確認を。
音楽を選択する
  • 音楽、BGMは「場の雰囲気」や「学びの時間」をコントロール出来る“メディア”である
    • 曲のピッチで参加者のぺーシングを促せる。作業モード、内省モードで使い分けるなど。
    • かける曲の長さでタイムマネジメントを行うことも出来る。3分、5分、10分、など。時計を見なくてすむようになる。
    • 実務家からは長調の明るい曲、歌詞のないものが良いとされている。
    • 参加者の年代にあわせてセレクションするのもgood
講師席のセッティング
  • 講師席にあると良いものは以下。
    • タイムスケジュール表…※第4章の項目も参照
    • 参加者名簿、座席表…顔写真の一覧もあると良い
    • 研修に関する関連資料…連続開催であれば、今までの流れを講師が把握出来るようになる
    • 当日の資料…参加者に渡したものと同じモノを手元にも用意
    • 水など飲み物

4.研修ツールを準備する

  • ポストイットや模造紙などのツール類。オフィスにあるような定番のツールでも良いが、遊び心を加えるのも良い。
    • 例えば100円ショップはワークショップツールの宝庫である。意識をもって見ていくとおもしろいツールがみつかる。
アイデアをアウトプットするためのツール
  • アタマに思い浮かんだことを外化、表現するツールとして以下。
    • ポストイット…四角いものだけでなく、カラフルであったりカタチにこったりするのも良い。ボードや模造紙に貼る場合は強粘着が良い(私見)
    • マスキングテープ…自由に切った紙や資料を貼ることが出来る。貼ったリ剥がしたり手軽。
    • はさみ…通常のはさみに加えて、紙をぎざぎざに切ることが出来るとおもしろい
    • ホワイトボード…ほとんどの研修室にある。マーカーのインクがきれずに出るかどうかが最も大切!赤、青、黒とあると良い。
    • イーゼルパッド…模造紙を貼ることが出来ない場合などに重宝。書いた内容を残しておけるので、2~3日続く研修には便利である。
    • ロッケンロール(by上田信行先生)…切っていないロール状の模造紙。時間とともに横に移動しながら作業過程を書き込んでいく。長い巻物。一斉に作業したり楽しいツール
    • コーワライティングシート…静電気でカベに貼り付けられるシート。書いたり消したり出来る。
ライティングツール
  • 普通のペン以外にも、巧拙が出ないような味のあるツールがあると良い。
    • ポスカ、プロッキー…カラフルで発色が良い。プロッキーは裏うつりしないので重宝する(私見)
    • ゲルマーカー…クレヨンのような書き心地で楽しく描ける
    • ダーマトグラフ…書き味が柔らかく、誰が買いても味のある文字になる
ファシリテーションツール
  • グループでのディスカッションや対話の際、発言権を管理したり、場を持ち上げたりするのに使える。講師の技術以外にもツールで抑制することもある程度可能。
    • クッシュボール…パスして発言をつなげていくための指名ツール。お手玉とか、柔らかいボールでも良い。
    • LEGOブロック…表現しにくいもの、カタチを持たないものを表現するのに良い。発言内容をブロックで表現してもらい、それを「指示」しながら、発言、対話をしてもらう。レゴは誰でもつくれて、巧拙が出にくい。抽象的なものが出来上がるので語ってもらうことで他者とのコミュニケーションツールとなる。
タイムキーピングツール
  • 以下のようなものがある
    • キッチンタイマー、ストップウオッチ
    • タイマーアプリケーション…PCで動くアプリはスクリーンに表示出来て便利である。例えばこちらからDL出来る。http://www.vector.co.jp/vpack/filearea/win/personal/tokei/timer/(フリーDLのvectorリンク)
    • ベル…会場全体に音を響かせる、高周波のものは会場の後ろまで届きやすい

5.事務局の役割-「内職事務局」から「支援する事務局」へ

  • 事務局というと、一般には研修のロジスティクスを回す裏方仕事であるし、講師によってはむしろ関わりが少ない方が良いという人もいる。しかしこの本では、事務局の役割とは、「研修講師を支援することを通して高い付加価値を発揮すること」と考える。
  • 事務局という独自のスタンスを活かして、「研修に対して高い付加価値を発揮すること」がその役割である。
  • このスタンスをとる理由のひとつとして、事務局というのは、積極的に関与するしないに関わらず、その場にいるだけで影響力をもってしまう立場であるから。
  • 事務局も参加者に見られていることを忘れない
  • 事務局とは研修の構成要素の一部である
  • ※研修は、講師と事務局がコラボレーションしながらつくりあげていくもの、という信念であり、どんな制約がある研修でも工夫は出来るのだという思いであり、研修を通じて学びを提供する側こそが学ぶのだ、という覚悟である→この思いを共有する事務局を「支援する事務局」と呼ぶ
  • 事務局しか持ち得ない情報や役割を活かして、研修を活性化することが出来る。例えば、外部講師にとっては社内事情は未知の世界。その佳境をするのが事務局の役割となる。
  • 講師の「ディレンマ・マネージング」→一部or全体への関与のバランス、を事務局がサポートし、全体と部分の支援を講師と協力しながら行っていく
  • つまり、講師をenhanceするのが事務局という意識!(私見)

事務局の4つの支援

  • ホスピタリティ、ドキュメンテーション、ウィスパリング、タイムコントロールの4つに分けて述べる
ポスピタリティ
  • 研修前に笑顔で名乗って挨拶すること、明るく元気に振る舞うことが大切
  • 顔の見える事務局として、人間的かかわりをもって、参加者と接することが必要
    • 向き、不向きがあるので、育成とともに、志向性を見極める採用も重要な要素である
    • 感情労働化しやすいので自らのケアが必要。自分の感情を押し殺しつづけることは出来ない。過大なストレスにつながりがちなので自分を良くモニターして注意すること。
ドキュメンテーション
  • 事務局の大切な役割のひとつは、記録を残す「ドキュメンテーション」
  • 記録者のメモ、ICレコーダーでの録音、写真、映像での撮影などさまざまある。
  • 記録する理由として
    • 次の研修のための参考資料として…次の際の改善として。講師の熟達にもなる
    • 他者への説明のため(アカウンタビリティ)…経営トップやマネジャーへのステークホルダー向けに説明するのに有効
    • アセスメントのため…リーダー育成研修などで、誰がどんな発言をしたのか、の記録をみて参考資料にするなど
    • 参加者へのフォローアップのため…リフレクションを促すことに役立ち、学習を促進する。
ウィスパリング
  • 研修の現場で起こっていることを詳細に観察し、必要に応じて研修講師に伝えながら場を活性化することに寄与する
  • 特に大規模な研修では講師だけでは察知出来ないため、ワークショップの進捗や理解把握などを共有してあげることは講師にも役立つ
  • ただし、情報を取捨選択して、伝えるべき事を伝えることを意識することが大切である。
タイムコントロール
  • 時間管理も大事な仕事。5分押し、残り10分などと、サインを出してあげたり、参加者の疲れを見ながら休憩を促したりすることが大切。
  • 研修のときは時間通りにいかないので、バッファをみて、ある程度時間調整が出来るように組んでおき、講師に進捗相談、提案をしていく
ルーティン化を防ぐ努力
  • 事務局の仕事は高い付加価値を提供すること。そのために、常に出来ることの可能性を探り拡張していくこと
  • ともすればルーティン化しやすい仕事である。いつもと同じ、こなすこと、やりすごすこと、に陥ることがある
  • 事務局自らが学び、変わり続けること。参加者は見ている。参加者に変わってもらいたいなら、自分も変わり続ける事務局であることが望まれる。

第8章 研修実施:「教えること」の技法① オープニング編

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ねらい

研修の冒頭部をデザインする

キーワード

プロ-ビング、OARR、ステータス管理

1.はじめに

  • これまでは研修カリキュラムのデザイン、人集めなど記載してきたが、第8~10章では研修当日のコンテンツデリバリー(教えることの技法)について記載する
  • 教えることとは考えさせることである(大村はま 2012)
    • 考えさせることの果てに存在することが「学ぶこと」である。その先には、学習者が「行動をかえること」がある

2.プロービング(探索行動)

  • オープニングにおいて留意することは、学習者を見極める探索行動=プロービング
    • 出席者名簿からどんな人が参加するのかイメージする
    • 来場した参加者を、直接見る。空気感を感じる
      • 講師控室にこもらず、現場にいるのも状況を把握するのに良い
    • 人を見て、フィールドワーカーになったつもりで会場を異邦人のように観察する
      • 人物模様や社会的ネットワークが見えてくる瞬間がある
    • レスポンシビリティ(反応可能性)のある人を探しておく→問いかけのレスをもらえそうな人を持っておくことは心強い
    • 意見が多そうな人、キーマン的な人、やる気がなさそうな人など、気になる人は開始前に味方につけておくことも有効

3.自己紹介

  • 研修講師の自己紹介から始まることが一般的。重要になるのがステータス管理。
    • ステータス管理とは、社会的位置、立場をコントロールすること
    • 教えるに足る人物であることを主張する一方で、受講者を支援する立場であることも表明する
      • ステータスは「上下」させながら参加者にアジャストしていくもの
      • さしずめ、「サーバントリーダーシップ」の発揮である。→http://jinjibu.jp/keyword/detl/193/
参加者同士の自己紹介
  • 参加者同士の自己紹介を普通にやると延々と30分~1時間となることもある。
  • その場合はグループごとに分けて実施するなど工夫する
  • 自然に打ち解けて、アイスブレイクになる話題が良い。アイスブレイクそのものの実施は難易度が高いことも。
自己紹介は学習者を知るチャンス!
  • 話が長い、高圧的、小さい声、ムードメーカーなど、自己紹介を見ながら把握出来る
  • グループ分けをしていたら、各グループの特徴も把握出来る。長いところ、短いところ…構成員の特徴がつかめる。

4.モチベーションの管理

  • 学習内容への不安や対人不安を緩和し、モチベートするのもオープニングの大事な役目である
  • 以下の3つの観点から研修を意味づける
    • 価値づけ…仕事との関連性を示す。現場での活用、自分に関係ありそう、というメッセージを込める
    • 効力づけ…学習する不安を軽減し、やれば出来そう、負担もそこまでなさそう、と思ってもらう
      • ARCSモデル(Keller 2010) も、学習者の動機づけプロセスとして知っておくと良い→http://goo.gl/6Z9glt
    • 支援づけ…もし、自ら学ぼうとするのであれば、最大限支援する、という意思表明を伝える

5.学びの契約をする

  • 学ぶ場をつくるためには、講師と参加者の合意をすることが大事。つまりは、OARRを握ることが大事。
  • OARRとは、以下の頭文字。
    • Outcome…目標、ゴール、メリット
    • Agenda…スケジュール、時間進行。→特に食事の時間やトイレ休憩など、生理的不満はケアをする
    • Role…ファシリテーターの役割、参加者の役割、講師の役割→振る舞ってほしい役割規範を伝えるのも効果的
    • Rule…場への参加のルール(グラウンドルール)→会場、時間、座席、電話使用のルールなどを共有する
OARRを握るコツ
  • 参加者への共感を示すことと、OARRを繰り返すことが大切
    • 共感、納得を得られるまでは強引に進めず、参加者の立場に共感を示す
    • OARRは、研修が進むごとに忘れがちになるので、リマインドを促す。特にO(アウトカム)の部分はセッションごとにリマインドするなど強調する。
      • 全体感を意識してもらうことが大事

6.サプライズをつくる

  • 研修の始めのサプライズは、学習者のネガティブなマインドを良い意味で裏切ることがある
  • ARCSのAttentionの部分であるが、いつもと違う、という楽しさを喚起することも有効である
  • 例えば、フードをふるまったり、少し学習活動と関連がなさそうなものでも、敢えて盛り込むことが有効なことも。

オープニングは重要だが、研修は長く続くもの。もし芳しくなくとも、終わりまでに場を盛り上げれば良い、と思うことも大切。