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『企業内人材育成入門』まとめ

『企業内人材育成入門』まとめ

プレゼンテーション

『企業内人材育成入門』

右側のプレゼンモードで見て頂くと、↓の箇条書きはパワーポイントのスライドのようになります。

お好みに応じて押してみてください。

『企業内人材育成入門』の構成(P9より)

  • 第1〜3章 人はどのように学んでいくのか
  • 第4〜6章 組織における学びを支援するために必要な方法論
    • インストラクショナル・デザイン、学習環境デザイン、評価について
  • 第7章 キャリア開発論、第8章 人材育成における政治力学

もはや、人材育成は「理論的裏付けなしに、誰もが語れるもの」ではない。

はじめに

  • 「私の方法論」ではない方法による人材育成が必要だ。教育を提供する主体は「企業」であって「私」ではない。
  • 人材育成に関する心理学教育学経営学等の関連諸科学の基礎理論を簡潔に紹介することを目的にした本である。
    • 豊富な事例、物語を伴った語りにするなど工夫している
    • 「良い理論ほど実際に役立つものはない」(クルト・レヴィン)
    • 本書から「人はどのように学ぶか」「学びの場をどのようにつくりだすか」「学びの効果をどのように考えるか」についてこれまでより詳細な理解に到達することが出来るだろう

序章「企業は人なり」とは言うけれど

本章のねらい 従来の人材育成を反省的に振り返りつつ、本書の構成について解説

キーワード 戦略的HRMコンピテンシーワークプレイスラーニング

  • 「理論的な裏付けなしに、誰もが語れる」という、従来の人材育成に付随したイメージは、深刻なデメリットも生み出す
    • 部下育成の経験談は不確かな記憶に基づく単なる自慢話でしかないことも
    • 誰もが語れることは何でもありとは違うはずだ
  • 本質的かつ体系的な議論を進めていかなくてはならない

企業戦略と連動する”戦略的HRM”

  • かつて人材育成は”人材労務管理”の一部として捉えられていた。
    • 人材は管理の対象であり人材への支出は削減したいコストとみなされていた。
    • 人材育成は”ひとづくり”的な精神論のもとに行われ、入社年次ごとの階層別研修が育成の中心であり、あとは名ばかりOJTにまかせていた。
  • 複雑で変化の早い環境、激しい環境になり、人材は競争力の源泉として注目されるようになった。→戦略的HRM(Strategic Human Resource Manegement)
  • 経営戦略からの要請として「知的生産性の向上」「組織パフォーマンスの向上」「競争力の向上」といった明確な目標を与えられるものになってきた。
  • 戦略的HRMという視点にたてば、企業が人材育成に取り組むのは経営戦略の一環なのである。

コンピテンシーに基づく人材育成

  • コンピテンシーとは、「特定の業務を遂行し、高い水準の業績をあげることが出来る個人の行動特性」であり、顕在化し、測定できるもの。日本企業で採用されてきた理由は2つある。
    1. 職能給や年功序列といった日本の人事制度が労働コストの上昇、若年層のモチベーションダウンをもたらしたため。
    2. 職能給の前提となっていることの虚構性があらわになった。「能力が高いからといって、高業績とは限らない」
    3. コンピテンシーが用いられる前は、業績に結びつくかどうかではなく、全社員に一律にスキルを付けさせようとしてきた。
  • コンピテンシーを用いた人材育成では、リストアップされたコンピテンシーを充足・強化させようとするもの。
    • 業務のなかで、なにができているかを重視し、研修に加えて、業務を通じた現場での学び、自己啓発も含めた学習活動を企業は支援するようになった。
    • コンピテンシーの充足、強化を自律的キャリア開発に対する支援とみなし、社員個人が希望する職種やポストに就くチャンスを創出するためのものとして、人事施策に掲げている企業も少なくない。
  • 人材育成は、高業績につながる行動ができるようになるため、そして適正な業種やポストに就くためといったより強い具体性を有するものになってきている。

知的生産性の向上を目指す人材育成

  • もはや人材育成は"人格形成"や"人づくり"といったレベルで語るべきものではない。経営目標の達成に直接的な貢献をすることが人材育成には求められている。
    • 単なる知識、スキルの習得を学習とみなすこともできない。競争優位性に直結した知的生産性向上を達成することではじめて、ビジネスパーソンは学んだと認められる。
  • 人材育成の活動は、人事、研修部門のみならず、現場で運用すること、マネジャーのマネジメントが必要になる。知的生産性の向上と認識することによって、すべてのビジネスパーソンのテーマになる。

ワークプレイスラーニングという視点

  • 「個人や組織のパフォーマンスを改善する目的で実施される学習その他の介入の統合的な方法」=ワークプレイスラーニング
    • 企業という場における学習や教育に対して、「個人や組織のパフォーマンス改善」という明確な目的を据えている
  • 研修、セミナーといった”フォーマル”な教育プログラムだけでなく、現場において仕事に従事するなかで、の”インフォーマル”な学習(実践知・経験知の獲得)をも念頭に置いている
  • OFF-JTOJT、さらには現場組織における日常的な仕事のススメ方や人事制度までを含めたトータルな意味での効果的方法を探求する姿勢がある
  • 経済学経営学、人的資源管理論→マクロ的な視点での戦略構築と戦略実行の制度構築に寄与する
  • 教育学、教育工学、学習科学、認知科学→現場レベルで、それらの戦略制度をうまく運営、実行していくことに寄与する

→育成、指導の方法に教育学や学習科学の知見を入れていく「つくった仏に魂を入れる」



第1章 学習のメカニズム 人はどこまで学べるのか

冒頭はていねいに記したが、ここからは、もう少しレジュメ形式にのっとり、箇条書きにしていこうと思う。

1-1本節のねらい 学習心理学の歴史を簡潔に振り返る

キーワード 学習心理学、行動主義、認知主義、状況主義

行動主義

  • 二十世紀初頭に出てきた概念。人間の有能さはすべて頭の中にある
  • 刺激⇔反応
    • 成功した時に与えられるほめられること「強化」
  • 即時フィードバックの原理→反応に対する情報はすぐに提供する
  • モールステップの原理→難易度が次第にあがっていく
    • 回答が出たら即時に「フィードバッグ=結果の知識(KR

情報:Knowledge of Result)」を返すことで、刺激と反応の組み合わせが頭の中に構成される

スキナー

認知主義

  • 1960年代から生まれ始めた学習観
  • 人間をコンピューターにたとえて理論を構築
    1. 情報を入力
    2. 処理の前に一時的にメモリにデータをためる
    3. 計算をつかさどるCPU
    4. 長期にデータをためておくハードディスク
    5. 情報を出力するディスプレイ

これらを人間の頭の各部分に当てはめて考え、人間の知的な振る舞いをコンピューターになぞらえて考えた

  • 短期記憶→上記2,3
  • 長期記憶→上記4
    • 長期記憶に蓄えておくために何度も繰り返す→リハーサル
    • 意味のにているものをまとめて覚える→体制化
  • 行動主義がブラックボックスとしてきた人間の知的振る舞いの詳細を明らかにすることに注力した
  • さまざまな部分が連携しあって、みずから情報を加工し、構成していく主体である=構成主義 が、理論的後影をなしている。

状況主義=状況的学習論

  • 1980年代から広まってきた
  • 環境との相互作用で考える
  • 頭の中の知識獲得に焦点を当てず、人間が知的に振る舞うには実際の環境のなかでどのように振る舞い、どういう相互作用を営むかに焦点をあてる
    • たとえばOJT。営業の上司同行に始まり、一人だちしていくプロセスで、上司の助けや道具の助けがある。

  • これら3つの考え方は、どれが優れているわけではない。いろいろな見方として捉えよう。

1-2本節のねらい 人間の記憶に関する理解を深める

キーワード 短期記憶、長期記憶、精緻化、先行オーガナイザー

  • 人は忘れやすい。エビングハウス曲線。聞いたそばから忘れていく。
    • 20分後には58%、1日後には34%、1ヶ月後には21%の記憶している
    • 数分後には60%は忘れている
    • 講義では、知識を伝達することはできない
    • 提示されただけの情報を蓄積することは難しい

記憶の高める方法

  • 人間の情報処理は3つのシステムが連携している
    • 感覚登録器・・・視覚聴覚触覚など
    • 短期記憶・・・入力された情報のなかで、「注意」が向けられたもの
      • 7±2チャンク 
    • 長期記憶・・・短期記憶から精緻化のためのリハーサルが必要
  • 精緻化・・・記憶を行う際に付加的な情報をつけること
    • 有意味化→ルートの覚え方、ごろあわせ
    • イメージ化、物語化→ものごとを連結させてイメージやストーリーをつくる
  • 先行オーガナイザー→全体像(枠組み)をあらかじめ把握しておくこと。これも記憶の定着に役立つ

1-3本節のねらい 協調学習の定義、効果について学ぶ

キーワード 協調学習、問題解決、相互教授、ジグゾーメソッド、CSCL

  • 複数の学習者が集まって、コミュニケーションをとりながら学ぶ学習→協調学習
    • 一人で学んでは得られないメリットがある
    • 「学習者同士の相互作用を通じて、全員の理解が収束に向かうことに効果がある」ロシュエル
    • 「複数の学習者が学んでも理解は統合されない。だからこそ各人が深く学べる可能性がある」三宅なほみ
      • 課題解決者(task doer)と解決課程をモニタリングするモニター(monitor)に役割分化する
      • それぞれの役割に従った視点で思考し、それぞれが個別の理解に到達する
      • 自己の理解を他者に説明する相互作用が自然と生まれる。相手が異なった理解をしていることに気づく
      • 学習者間の理解の不一致は、相互の理解をより高次なものに引き上げる可能性を有している
  • 「する側」「される側」が入れかわる相互教授(reciprocal teaching)リンクサー&ブラウン
    • 交互に先生役と生徒役になり、要約したり、質問したりする。
  • ジグゾーメソッド(jigsaw method)アロンソ
    • 各学習者がまったく異なる領域についてそれぞれに学び教えあい統合する
  • CSCL(computer Supported Collaborative Learning)コンピューターを活用した協調学習
    • BBSやブログなど電子メディア上でバーチャルに協調学習を行うこと
    • Web2.0以後、多くの人びとが知識や情報を持ち寄ることで構成される参加型のWebは当たり前に。
    • それらの多くは「教育」や「学習」を標榜していないが、協調学習そのものである

1-4本節のねらい 成人教育論の基礎的な知見について学ぶ

キーワード アンドラゴジー、P-MARGE

  • 成人の学習を援助する技術と科学→アンドラゴジー(Andragogy)マルカム・ノールズ
  • オトナの学習はP-MARGE
    • p…practical(実利的)
    • m…motivation(動機が必要)
    • a…Autonomous(自律的)
    • r…Relevancy(関連性)
    • g…Goal-oriented(目的志向)
    • e…experience(豊富な人生経験)
  • 確固たる動機があって学習のレディネスを獲得する
  • 腰を上げると子供と異なり自律的に学んでいく
  • それまでの経験が中心になる
  • 支援者は、オトナの学習は問題解決的であり、目的志向的であることに注意すること

1-5本節のねらい 物語を通した学習について理解を深める

キーワード 論理-科学的様式、物語様式、ゴールベースドシナリオ

  • 「人間の根源的な認識には論理-科学的様式(パラディグマティックモード)と物語様式(ナラティヴモード)がある。ジェロム・ブルーナ
    • 論理-科学的様式→普遍的な真理性と論理的一貫性を求め、簡潔な分析、理路整然とした仮説を導く思考様式
    • 物語様式→もっともらしさ(迫真性)を求め、人間の意図や行為、人間の体験する苦境やドラマを扱う思考様式
  • ブルーナーは、これらが相互補完的であること、しかし物語様式が軽視されがちなのでこれを復権することを提唱


(つづく)